流星さんの講習を受けて1週間。
ようやく時間が作れて路上に出た。

モチベだけは高いものの、講習後にあった無敵感が薄れているのを実感する。
前回の終了時に全く無くなっていた声掛けに対する躊躇が出来てしまっていた。

そんな駄目な部分と向かい合いつつ、街を行く女の子に少しずつ声を掛ける。
ガンシカや微妙な反応がある。これは当たり前だと思いつつも気持ちが下がっていく。

講習中のことを思い出す。
大丈夫だと言い聞かせて、雑にならないよう注意しつつチャンスを待つ。

暫くして歌舞伎町近くのゲームセンターの入り口付近、一人クレーンゲームに夢中になっている子が目に入る。
ニーハイにミニスカート、黒髪でツインテ。買い物帰りにしても多すぎる荷物。

結構な枚数の硬貨を筐体へと食わせた彼女は、ようやく景品をゲットしたらしかった。
飛び跳ねて喜ぶ彼女を見て、強ばっていた自分の表情が緩む。
景品を手に高揚した雰囲気で店を出てきた彼女に声を掛けた。

名前も知らない彼女の手の中にある景品の人形を取っ掛かりにして話を始める。
相手が少し反応する。もう景品はどうでもいい。関連性の無い別の話題へ。
相手の思考が追いついてこれないよう話題を転回するように努める。

旧コマ劇場前あたりまで並んで歩いった。相手との距離を常に気をつける。
彼女は関西から遊びに来ており、友人と明日の朝一番でディズニーに行くために前乗りして泊まる場所を探しているらしかった。
土地勘は無く、携帯の充電が切れているので早くどこかで充電したがる素振りを見せていた。

ぼんやりとした輪郭でしか見えなかったけれど感じた。
これはいけるはずだ。

自分ひとりでこういうシチュエーションになったことは始めてだったけれど、頭の中は驚くほど冷静だった。
個室を打診する。いきなり知り合った相手と行ける筈が無いと警戒される。もっともな意見だ。

彼の言葉を思い返していた。段階を間違えてはいけない。
別の話題で盛り上がらせて相手の思考に通常と違う分岐を作ることを心がける。

「マクドならいいよ」
彼女が言った。

関西では本当にマクドっていうんだなーとか感じながら歩き出す。
彼女の手をとりマックへ歩き出した。肩と肩とが触れあう距離。

自分の飲み物をそれぞれ買い、カウンター席で並んで座る。
彼女が自身の現状やそれまでについてぽつぽつと語りだす。

彼氏と同棲していること。小遣いがほしくなったら短期でバイトするということ。
これまで付き合ってきた男達の話。彼氏との仲、セックス観。。
なるべく彼女に言い訳になるような話題や返しを意識した。
大事な事は後日に繋げることではない。今日この夜に即る事なんだ。。

それでもマックの店内では手つなぎ以上の接触は出来なかった。
そろそろ今日泊まる漫喫に向かうという彼女と店を出る。

ラストチャンスだなと思った
ここで打診して駄目でも、打診しなくても駄目でも結果は一緒。
わりとストレートに誘ってみた。
今まで積み上げさせた言い訳が十分に仕事をしてくれるだろうか。

そうして最初に声を掛けてから1時間半後。

気がつけば自分はホテルの一室で彼女に腰を打ちつけていた。
彼女は想像以上に着痩せするタイプった。スタイルも良く肌も綺麗だった。
ニーハイはそのままで。ここはとても大事なことだ。
感じやすいらしくベッドは洪水みたいな状態になっていた。

アルコールもなし。事前にメールやLINEで和んでいた訳でもなし。全くの初対面の23歳の女の子とセックスをする。
こんなことが実際にあるなんて思いもしていなかった。

あたまの中がぼーっとして、冷静な自分が席を外し無我夢中に腰を打ち付ける。
気がつくとゴムをつけて彼女の中で果てた。

ベッドの上で自分の事についても少し話す。最初に話した相手の前提を崩さない程度に。
終電が近づきホテルを出て彼女を漫喫に送った。
LINEや番号は交換しなかった。余程な事がなければもう一生会うこともないのかもしれない。



運も良かったのだろうし、タイミングも良かったのかもしれない。
出来すぎているなぁとも思ったけれど、ちゃんと自力で即れたんじゃないかなと思いながら帰路についた。